アンケートでの質問に対する回答
第1部 企業との共同開発事例の紹介 「新たな電解研磨手法によるステンレス鋼表面の超平滑化」
ステンレスの表面の超平滑化によって防錆効果が向上することで従来よりどのくらいコストが削減できるのでしょうか?
一般配管用ステンレス鋼管SU20の場合、①SUS304 は材料代 600円/m、②SUS316Lは材料代1150円/m、③SUS304+ドライプロセスコーティングは材料代600円+処理費2000円=2600円/m、④SUS304+本ウェットプロセスコーティングは材料代600円+処理費 500円=1100円/mと試算され、本発表の処理④はSUS316未処理品②と比べても安価となります。
B1 新規導入した耐候性促進試験機を活用した製品開発
長期にわたる試験が予想されますが、試験機の稼働状況(占有率)は如何でしょうか?
1か月程度に渡りご利用いただく企業様もおられますが、15日程度までのご利用が多いです。予約待ちとなることは少ないですが、ご利用の際はお早めにご相談ください。直近の予約状況については、R5年1月以降は空いております。
C1 液体食品のカプセル化技術開発
本研究のカプセルの耐熱性はどの程度ありますか?
アルギン酸ポリマー自体はかなりの耐熱性(200℃近くまで耐性)がある事が知られており、アルギン酸カプセルも内圧(内包液の沸騰等)を制御すれば、オートクレーブのような高熱の処理も可能です。一方、電子レンジのような分子振動を起こす処理では破裂が、乾式加熱等カプセル表面と内包液が乾燥してしまうような処理ではカプセルの潰れが起こることが分かっています。
自社製品での試作依頼などができるか。またその費用などが知りたいです。
当センターで簡単に試作を行うことはできます。その際の費用は無料となりますので、お気軽にご相談ください。ご自社で試作をされる際には、製法に係るレシピやノウハウの開示がありますので、実施許諾契約あるいは秘密保持契約が必要となります。
C2 各種センサー活用による香りと味の可視化とその活用事例
見学で知りましたが、香りセンサーの方はアルコールを含むものはダメとのことで、ビールに使えず残念に感じました。GCが他の選択肢になると思いますが、ビールではどのような物質を見ることができますでしょうか。
低分子アルコールを含むものの測定は確かに難しいですが、使用するサンプル量を微量にする、もしくは機器測定時の設定をトップノートではなくラストノートに変更する等によって結果が得られる場合もあるようです。またGCで分析できるビールの香り物質については下記のような報告がありましたのでご参考いただければと思います。(ビールの香り:その‘構造’を解き明かす 76成分によるビール香気の再構築,岸本徹,化学と生物,2018年56巻10号p.659-664)
味覚センサーで食品以外(例えば化粧品とか)を測るとどうなるでしょうか?製品の評価に使えないかと思いました。
これまでに味覚センサーで食品以外のものを測定したことがないため利用できるかどうかは分かりません。例えば化粧品などでしたら指標となる評価項目があるかと思いますので、まずはその項目に適した評価法に従うのがいいかと思います。ただ、仮にその評価と味覚センサー中の何れかのセンサーの挙動が一致するということであれば、用いることもできないことはないとも考えられます。
香りや味の違いが、相対的評価でレーダーチャートのように出力されることは分かりましたが、どのくらいの精度で差が出せるか気になりました。例えば旨味に関して、ppmオーダーでグルタミン酸量に違いがある溶液(飲料など)でも差が出るものなのでしょうか。
味覚センサでppmレベルの差を見るというのは難しいと思われます。感度としては、人では一般的に20%程度の濃度差(ウェーバー比)で違いが感じらるといわれていますが、味覚センサ―はその10~20倍の感度があるようです。注目する化合物(例えば旨味であればグルタミン酸など)が決まっているのであればHPLCなどによる成分分析がごく微量の差も把握できることから適していると思われます。一方で旨味成分としてはグルタミン酸以外にもイノシン酸やグアニル酸、コハク酸等様々あるため、それらをまとめて人が感じられるレベルでどのような存在状態となっているかを知る上では味覚センサでの測定が適しているかと思われます。