とっとり技術NEWS22号(抜粋版)
とっとり技術NEWS No.22(2021年12月発行)
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技術支援企業紹介 ~県内企業の新製品・新技術~
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センターお知らせ
特集 ~センター機器の活用と提案~
センター所有機器について
鳥取県産業技術センターでは、企業の皆様の品質管理や研究開発にご活用いただける最新の試験・分析機器を整備しています。本号では、各種機器の中から、「信頼性評価」「切削支援」「ウィズコロナ・アフターコロナ支援」に関する機器をご紹介します。
■信頼性評価ツール(鳥取:電子・有機素材研究所)
製品を市場に投入するとき、製品が使用環境から受ける影響を事前に評価し、製品ライフサイクルを通じて信頼性及び安全性を十分に担保することが不可欠です。これらの確認を怠ると、製品不良の発生や、場合によっては製品に起因する火災や事故により、企業として重大な対応に追われることとなります。
電子・有機素材研究所では、大きく分けて「振動」と「温湿度」に係わる信頼性評価を行う装置を保有しています。例えば「振動試験」では、輸送中のトラック振動に対する製品の梱包方法の確認、また「温度試験」では、自動車のエンジンルームのように、氷点下~100℃超の温度変化が繰り返される環境での製品の耐久性などの試験を行うことができます。
電子システムグループ 吉田・山根
■切削支援ツール(米子:機械素材研究所)
新型コロナウイルス感染症の流行により、生産者、製造業者、飲食店業界の皆様は受発注の変動やフードロスなど、様々な苦労に直面しています。そのためコロナ禍の後の、ウィズコロナ、アフターコロナの社会においては、思わぬ事態が発生してもダメージの少ない商品開発が求められます。
食品開発研究所では、受発注の変動に耐えられるような商品開発や、販路の拡大、フードロスの削減、商品の差別化に向けた検証が可能な機器がありますので、その一例をご紹介いたします。
機械・計測制御グループ 佐藤
■ウィズコロナ、アフターコロナ支援ツール(境港:食品開発研究所)
新型コロナウイルス感染症の流行により、生産者、製造業者、飲食店業界の皆様は受発注の変動やフードロスなど、様々なご苦労をされておられること思います。そのためコロナ禍の後の、ウィズコロナ、アフターコロナの社会においては、思わぬ事態が発生してもダメージの少ない商品開発が求められます。
食品開発研究所では、受発注の変動に耐えられるような商品開発や、販路の拡大、フードロスの削減、商品の差別化に向けた検証が可能な機器がありますので、その一例をご紹介いたします。
水畜産食品グループ 山川 農産食品・菓子グループ 髙重
詳細は、PDF版でご覧ください。
技術支援企業紹介~県内企業の新製品・新技術~
【1】AI技術を活用したアルミニウム角板外観検査装置の開発
株式会社片木アルミニューム製作所大山工場~高品質なモノづくりを目指して~
新技術概要
株式会社片木アルミニューム製作所大山工場では、電子機器や家庭用品など様々な用途に使用されるアルミコイルや板を製造販売しています。
品質に対する消費者の意識が年々高まる中、高品質な製品を安定生産するには、「作った製品をしっかり検査する」ことが必要不可欠です。様々な検査項目の中で特に製品の「見た目」を検査する「外観検査」は、検査員の作業負荷が高く当社では以前からカメラ画像を活用した外観検査装置による自動化の取り組みを進めておりました。しかし、「ルールベース」と呼ばれる画像を決まった手続きに従って処理し、OK/NG判定をする従来技術を用いた外観検査装置では、製品の配置ずれや形状の影響など撮像時の写りこみの変化に弱いという課題がありました。
そこで、産業技術センターに相談し、AI技術を活用したアルミニウム角板の「自動外観検査装置」を共同で開発しました。AI技術を活用することで、設定された条件に合致するものに加え、それらの条件から外れたものに関しても柔軟性を持った判定が可能になりました。
センターとの関わり
製品の製造・開発を行う上で直面する技術面での様々な課題について日頃から相談しており、本案件も従来から取り組んでいた外観検査技術の精度向上についての相談がきっかけで取り組みました。
今後の展開
現在は実証実験のために開発した外観検査装置を工場内に設置し、画像データの蓄積を行いながら、安定稼働に向けた装置の改修などを行っています。自動化技術については引き続き研究開発を行い、さらに高品質なモノづくりを目指して挑戦し続けます。
【株式会社片木アルミニューム製作所 大山工場】
産業技術センターの研究技術により、外観検査の自動化に向けて大きく前進しました。生産性の向上や作業員の負担軽減につながる技術として、この技術を他作業へ応用展開していきたいと思っています。今後とも産業技術センターのご協力を得ながら、より良いモノづくりを追及していきたいと考えています。(代表取締役社長 片木 威 氏)
・所在地:鳥取県西伯郡大山町所子字押平道802
・電話:0859-53-4565
・URL:
https://katagi-al.co.jp/
・事業内容:アルミニウム圧延品(角板、丸板、コイル)・アルミニウム圧延プラント及び関連設備の輸出
【2】日本酒「純米大吟醸 すいかの花」の開発
久米桜酒造有限会社 ~西瓜麹とオリジナル酵母使用~
新商品概要
久米桜酒造(有)は鳥取県西部の伯耆町にある蔵元で、秀峰・大山(だいせん)の麓の豊かな自然の中で日本酒を製造し、地元を中心に販売しています。
これまで地元の丸山地区で栽培された酒米「強力」や「鳥取旭」等、“地のもの”にこだわった原料を使い、お米の田植えや収穫の際には、体験イベントを開催し、地域と一緒になって日本酒製造に取り組んできています。この取り組みの一環として、日本酒の発酵を担う麹菌と酵母も鳥取オリジナルのものを使うことで、米、水と合わせて、オール鳥取の日本酒ができ、PR効果やブランド向上に繋がっていくことを期待して新商品開発に向けて取り組みました。
具体的には、鳥取オリジナルの麹菌をつかった米麹造りの検討や新しい酵母を使ったモロミ発酵管理など試験醸造を行いました。その結果、オール鳥取の日本酒「純米大吟醸 すいかの花」を開発・発売することができました。
センターとの関わり
産業技術センターが開発した鳥取オリジナルの麹菌、酵母についての講演を聴講したのが製品開発のきっかけでした。その後、菌株の特徴にあった商品コンセプト、製造・発酵管理を検討し、開発・発売することができました。
今後の展開
今回の「純米大吟醸 すいかの花」をきっかけとして、「西瓜」をキーワードに販売店などと繋がっていき、相乗効果により、さらに広く展開できればと思っています。これからも地元にこだわった酒造り、鳥取らしい商品開発に取り組んでいきたいと思います。
【久米桜酒造有限会社】
オール鳥取であるということを伝えられたら良いと思っていました。そんな中でセンターが育種した麹と酵母を使用したお酒が出来て嬉しく思います。コロナ過だからこそ、繋がる事が必要だと。『どうすれば人を喜ばす事ができるか』今回の取り組みで伝われば幸いです。(杜氏 三輪 智成)
・所在地:西伯郡伯耆町丸山1740-50
・電話:0859-68-6555
・URL:
http://g-beer.jp/kumezakura/
・公式オンラインショップ:
https://gbeer.ocnk.net/
・事業内容:日本酒、リキュールの製造・販売
【3】こだわりのフルーツトマトを使った風味のよいトマトジャム
一般社団法人 結夢(どりーむ) ~冷解凍を応用した新たなトマトの加工方法~
新商品概要
トマト農家から、「こだわりのフルーツトマトを冷凍保存しているので、スイーツに使える風味のよいトマトジャムを製造して欲しい。」と頼まれたことがきっかけでした。トマトを解凍すると果肉とエキスに分離するので、当初はエキスは捨てて、果肉に砂糖とレモン果汁を加えて煮詰める方法でトマトジャムを試作しましたが、「甘い」「酸っぱい」「焦げ臭い」など失敗の連続でした。そこで、食品開発研究所に相談したところ、「低温加工すると風味のよいジャムになり、今は捨てているエキスも活用できる方法がある」と提案を受け、「トマトジャムの製造条件の確立とトマトエキスの凍結融解濃縮」に取り組みました。湯剥きしたトマトとペースト状に潰したトマトをブレンドし、砂糖とレモン果汁を加えて沸騰させないよう低温加熱によって、風味のよいプレザーブタイプのトマトジャムに仕上がりました。分離したエキスは、袋に入れ、凍結・融解を数度繰り返すことで、濃厚なトマトエキスに変身し、無水カレーやドレッシング、ジュレ等に、活用できるようになりました。
センターとの関わり
冷凍フルーツトマトを活用した商品開発については、産業技術センターの「ものづくり人材育成塾」に参加し、原料処理から加熱濃縮、充填・殺菌までの、ジャムの一連の試作加工ができる設備を利用して、納得できるトマトジャムが完成するまで検討することができました。
今後の展開
加熱時の温度管理を失敗すると焦げ臭が発生するなど課題はありますが、原料のフルーツトマトを冷凍保存しておけばいつでも製造できるので、皆さんに納得して頂けるような風味がよく、美味しいトマトジャムを提供できるように今後も努力していきたいと思います。
【一般社団法人 結夢(どりーむ)】
トマト農家の「規格外品を加工して付加価値の高い商品を開発して欲しい」との強い要望に応えてトライしてみました。かなり難易度が高く何度も失敗しましたが、産業技術センターのお力添えのお陰で形になるものができました。まだまだ、発展途中ですが、更に付加価値の高い商品になるよう努力していきます。(理事長 今石 誠)
・所在地:鳥取市河原町中井336
・電話:0858-71-0564
・URL:
http://welfaredream.or.jp
・事業内容:障害者就労継続支援、食品乾燥、パウダー、農産物加工等
【4】かにみそを使ったバーニャカウダの商品化
株式会社門永水産 ~常温流通可能な商品開発~
新商品概要
当社では、境港で水揚げされたベニズワイガニのかにみそと大山乳業の生クリーム、青森県産のニンニクを使って「かにみそバーニャカウダ」を製造しています。この商品は、かにみそのコクと旨味を生かし、ニンニクの香りが食欲をそそる、癖のないマイルドな味わいとなっております。
この味をより多くの人に味わっていただきたいと思い、常温流通できる商品の開発に食品開発研究所と取り組みました。
魚離れと言われる中、クセがあり日本酒の肴などのイメージが強いかにみそも同じ状況にあり、若者や女性に購入していただく機会は減ってきています。
そこで気軽に手にとっていただけるかにみその商品を開発したいという思いから、バーニャカウダソースにかにみそを活用することを発案し、味はもちろんのこと、シールや瓶のデザインにもこだわり、お土産、ギフトなど多様なシーンでお役にたてる商品に仕上がりました。
センターとの関わり
常温流通できるかにみそバーニャカウダの商品化を目指し、開発当初は、食品開発研究所が所有するレトルト試験機で加熱加圧殺菌を検討しました。加熱加圧殺菌では、かにみその風味が悪くなってしまい、思うような品質の商品に至りませんでしたが、担当研究員の方から、かにみその風味を損なわない加工方法のアイデアをいただき、何度も試作と分析を繰り返しました。また、社内で実施可能な品質管理方法などの技術指導もしていただき、常温流通可能な満足いく商品が完成しました。
今後の展開
かにみそバーニャカウダの製造技法を活用して、「かにみそトマトジャン」の販売を開始しました。今後のシリーズ展開も考えており、おいしくておしゃれな、常温流通の瓶詰めシリーズを提供できるよう努力していきたいと思います。
【株式会社門永水産】
かにみそバーニャカウダは評判がよく、リピーターも多いです。このようなヒット商品ができたことを嬉しく思います。産業技術センターの皆様にはご指導いただきまして感謝いたします。今後も鳥取県の魅力を発信できる商品を開発していきたいと思います。(開発課 石田 彩)
・所在地:境港市昭和町12-27
・電話:0859-44-3011
・URL:
http://www.kadonaga.com
・事業内容:かにの加工、魚の加工、かに加工品の製造
■センター職員が表彰されました ~2021年度 中国地域公設試験研究機関功績者表彰~
令和3年11月25日に開催された中国地域公設試験研究機関功績者表彰(主催:公益財団法人中国地域創造研究センター)において、当センター職員が表彰されました。
■地域技術貢献賞(中国経済産業局長賞) 鈴木 好明(機械素材研究所長 兼 食品開発研究所長)
「加工・接合に係る生産技術の開発支援」
■研究奨励賞(公益財団法人 中国地域創造研究センター会長賞) 福留 祐太(電子・有機素材研究所 主任研究員)
「画像処理を活用した外観検査技術の研究開発 および応用技術開発」
■今後のセミナー・講習会のご案内(1月、2月)
開催日 | 内容 | お問い合わせ先 |
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1/14(金) | 工場のFA・デジタル化のための自動化相談会(主催:ひろぎんエリアデザイン 共催:鳥取県産業技術センター) | 電子・有機素材研究所 TEL:(0857)38-6200 |
1/31(月)~2/2(水) | ロボットシステムインテグレータ研修(SIer向け) | 機械素材研究所 電話(0859)37-1811 |
2/3(木)~4(金) | ロボットシステムインテグレータ研修(ユーザ企業向け) | |
2月中旬 | 「有害物質と法規制 ~REACHとRoHS~」(分析技術能力強化事業) | 電子・有機素材研究所 TEL:(0857)38-6200 |
2月中旬 | 「清酒仕込み研修」(清酒製造技術支援事業) | |
2/24(木)~25(金) | 第3回食品の衛生管理技術研修会(上級編) | 食品開発研究所 TEL:(0859)44-6121 |
2月下旬 | 「新規導入機器講習会 電子顕微鏡」 | 電子・有機素材研究所 電話(0857)38-6200 |
2月下旬 | 「新規導入機器講習会 材料強度試験機」 | |
※開催日程や内容の詳細が決まり次第、随時、
センターホームページ(https://tiit.or.jp/)
でご案内します。 |